HYBEの成功を支えたパク・チウォン氏の経営戦略とは？マルチレーベルとグローバル展開の秘訣

HYBEは、韓国を代表するエンターテインメント企業として世界的な成功を収めています。その成長を支えたのが、パク・チウォン氏の革新的な経営戦略です。

2024年7月に社長職を辞任することが発表されたパク氏ですが、彼が築いた「マルチレーベル戦略」や「グローバル展開」などの施策は、HYBEの躍進に大きく貢献しました。

本記事では、パク・チウォン氏の経営戦略の核心に迫り、HYBEが音楽業界のトップ企業へと成長した理由を詳しく解説します。

HYBEの成功を支えたパク・チウォン氏の経営戦略とは？

HYBEが今日のような世界的企業へと成長した背景には、パク・チウォン氏の卓越した経営戦略があります。

彼は、音楽業界の枠を超えたビジネスモデルの構築、マルチレーベル戦略の推進、そしてグローバル市場への積極展開を通じて、HYBEの躍進を支えました。

ここでは、パク・チウォン氏が打ち出した経営戦略の核心について詳しく解説します。

ゲーム業界での経験を活かしたビジネスモデル

パク・チウォン氏は、HYBEに入社する以前にゲーム業界での豊富な経験を持っていました。

特に、韓国のゲーム企業NEXON（ネクソン）で培った知見を、エンターテインメント業界に応用したことが彼の強みでした。

ゲーム業界では、コンテンツの持続的な収益化や、ファンダム（ファンコミュニティ）の形成が重要視されます。

この考え方を音楽業界に取り入れたことで、HYBEは従来のCDやライブ収益に依存しない、多角的な収益モデルを確立しました。

具体的には、ファンダム向けの専用プラットフォーム「Weverse」の展開や、メンバーシップ制度の強化によって、アーティストとファンの関係を深めつつ安定した収益基盤を築いたのです。

マルチレーベル戦略で多様なアーティストを育成

HYBEの大きな成長要因の一つが「マルチレーベル戦略」です。

かつてBig Hit EntertainmentとしてBTS（防弾少年団）の成功に依存していたHYBEですが、パク・チウォン氏のリーダーシップのもと、多様なレーベルを傘下に持つ企業へと変貌しました。

現在、HYBEはHYBE Labels、Pledis Entertainment、Source Music、BELIFT LAB、ADORなど、複数のレーベルを運営しています。

この戦略により、BTS以外のアーティストも育成し、会社全体としてのリスクを分散すると同時に、各レーベルが独自のスタイルを持つことで、より多様な音楽市場に対応できるようになりました。

特に、新たなガールズグループ「NewJeans」を生み出したADORや、「SEVENTEEN」を擁するPledisの成功は、マルチレーベル戦略の有効性を証明しています。

グローバル市場での積極展開と戦略的M&A

HYBEの急成長を支えたもう一つの重要な要素がグローバル市場への積極的な進出です。

パク・チウォン氏の指揮のもと、HYBEは韓国国内市場にとどまらず、アメリカや日本を含む海外市場への拡大を加速させました。

その一環として行われたのが、戦略的M&A（企業買収・合併）です。

HYBEは、2021年にアメリカの音楽マネジメント会社「Ithaca Holdings」を買収し、ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデといった世界的アーティストを抱える強固なネットワークを構築しました。

また、日本市場向けにはHYBE JAPANを設立し、日本オリジナルのアーティスト育成にも力を入れています。

このように、パク・チウォン氏のグローバル戦略は、HYBEを単なる韓国のエンタメ企業から世界的な音楽ブランドへと押し上げる大きな要因となりました。

HYBEの成長を加速させたテクノロジー活用

HYBEは、単なる音楽会社ではなく、テクノロジーを活用したエンターテインメント企業へと進化しました。

パク・チウォン氏の指導のもと、デジタルプラットフォームの構築や新たな収益モデルの開発が推進され、これがHYBEの急成長を支える大きな要因となりました。

ここでは、HYBEがどのようにテクノロジーを活用し、競争力を高めてきたのかを詳しく見ていきます。

ファンダムプラットフォーム「Weverse」の成功

HYBEのデジタル戦略の代表例が「Weverse（ウィバース）」です。

これはアーティストとファンが直接交流できるプラットフォームであり、BTSをはじめとするHYBE所属アーティストだけでなく、他の芸能事務所のアーティストにも開放されています。

Weverseの特徴は、ファンがコンテンツを消費しながら、コミュニティを形成できる点にあります。

例えば、アーティストの投稿にコメントしたり、ライブ配信を視聴したり、限定コンテンツを購入したりすることで、ファンのエンゲージメントが高まります。

さらに、Weverseはグローバル市場に向けて多言語対応しており、K-POPファンが国境を越えてアーティストとつながることが可能です。

このプラットフォームは、HYBEにとって新たな収益源となっており、デジタル時代のエンターテインメント企業としての地位を確立する重要な要素となっています。

音楽とテクノロジーの融合による新たな収益モデル

HYBEは、音楽とテクノロジーを融合させることで、新たな収益モデルを生み出しました。

例えば、Weverseを活用したデジタルコンテンツ販売や、アーティストの映像コンテンツを視聴できる「Weverse Concert」などが挙げられます。

さらに、メタバースやNFT（非代替性トークン）といった最先端技術を取り入れ、新しいエンターテインメントの形を模索しています。

HYBEは、2022年にメタバース事業を手がける「Zepeto」との提携を発表し、バーチャル空間でのアーティスト体験を提供する試みを行いました。

また、NFTを活用したデジタルコレクティブル（収集可能なデジタルアイテム）を販売し、音楽IP（知的財産）をデジタル資産として展開する動きを見せています。

このように、HYBEはテクノロジーを活用することで、単なる「音楽会社」の枠を超え、次世代のエンターテインメント企業としての地位を確立しつつあります。

財務成長を支えたパク・チウォン氏の戦略

HYBEが音楽業界でトップ企業へと成長した背景には、パク・チウォン氏の巧みな財務戦略がありました。

彼は売上高を劇的に成長させるとともに、HYBEのビジネスモデルを変革し、より安定した収益構造を築きました。

また、Big Hit EntertainmentからHYBEへのリブランディングを主導し、グローバル市場での競争力を高めることにも成功しました。

売上高の劇的な成長と収益モデルの変革

パク・チウォン氏がCEOに就任した2020年以降、HYBEは売上高を大幅に成長させ、収益モデルを大きく変革しました。

特に、2020年から2023年にかけて、HYBEの売上は約2倍以上に増加しました。

この成長を支えた要因として、以下の点が挙げられます。

• 音楽制作だけでなく、グッズ販売やデジタルコンテンツ事業を強化
• Weverseを活用したファンダムビジネスの拡大
• M&A戦略による新規市場への進出

従来のエンタメ企業は、アルバムやコンサート収益が主な収入源でしたが、HYBEはデジタルプラットフォームやIP（知的財産）ビジネスを拡大することで、安定した収益基盤を確立しました。

Big Hit EntertainmentからHYBEへのリブランディング

HYBEの企業イメージを大きく変えたのが、2021年に行われたBig Hit EntertainmentからHYBEへのリブランディングです。

この変更の目的は、「音楽会社」から「グローバル総合エンターテインメント企業」へと進化することにありました。

リブランディングのポイントは以下の通りです。

• 「HYBE」という名称に変更し、より包括的なエンターテインメント事業を展開
• マルチレーベル体制を確立し、多様なアーティストを育成
• テクノロジー事業を強化し、音楽とデジタルを融合

このリブランディングにより、HYBEはBTSの成功に依存する企業ではなく、グローバルなエンターテインメント企業としての地位を確立しました。

パク・チウォン氏の財務戦略と経営改革は、HYBEの飛躍的な成長を支える大きな要因となったのです。

課題と今後のHYBEの展望

急成長を遂げたHYBEですが、その過程でいくつかの課題も浮上しています。

特に、傘下レーベルとの経営権対立や、海外市場での財務リスクなど、今後の成長に影響を与えかねない問題が顕在化しています。

さらに、2024年には新CEOイ・ジェサン氏が就任し、「HYBE 2.0」とも呼ばれる新たな戦略が展開される予定です。

ADORとの経営権対立と企業イメージへの影響

2024年初頭、HYBEは傘下レーベルであるADOR（アドア）との経営権対立に直面しました。

ADORは、新世代ガールズグループ「NewJeans」を生み出したレーベルであり、その代表であるミン・ヒジン氏が独自の経営方針を持っていました。

しかし、HYBEとミン・ヒジン氏の間で経営方針の食い違いが生じ、対立が激化しました。

特に、HYBEがADORの支配権を強めようとする一方で、ミン・ヒジン氏は独立性を維持したいと考えており、両者の意見が衝突しています。

この対立は、HYBEの企業イメージにも影響を与えており、ファンや投資家の間でHYBEのガバナンス（企業統治）に対する疑念が高まる要因となっています。

HYBEアメリカの巨額損失と今後のリスク

HYBEは、グローバル市場の拡大を目指してアメリカ市場に積極的に進出しましたが、ここでも課題が浮上しています。

特に、2021年に買収したIthaca Holdings（ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデを擁するマネジメント会社）が期待したほどの収益を上げられていません。

2023年にはHYBEアメリカが巨額の損失を計上し、一部では「買収が過大評価されていたのではないか」との声も上がっています。

加えて、HYBEは2023年にSMエンターテインメントの買収を試みたものの、最終的には失敗し、その過程で大きな経済的・ブランド的なダメージを受けました。

こうした状況を踏まえ、今後のHYBEの課題は、アメリカ市場における持続的な成長戦略の見直しと、財務リスクの管理にあると言えます。

新CEOイ・ジェサン氏の「HYBE 2.0」戦略とは？

2024年7月、パク・チウォン氏の退任に伴い、HYBEの新たなCEOとしてイ・ジェサン氏が就任します。

イ・ジェサン氏は、HYBEの成長戦略をさらに進化させる「HYBE 2.0」構想を掲げており、その具体的な内容が注目されています。

現時点で明らかになっている「HYBE 2.0」の方向性は以下の通りです。

• マルチレーベル戦略の強化：各レーベルの独立性を維持しつつ、グループ全体のシナジーを最大化
• テクノロジー事業の拡大：「Weverse」を中心に、メタバースやAIを活用した新規事業を推進
• 海外市場での新たなM&A戦略：欧米市場でのさらなる買収・提携を模索

特に、イ・ジェサン氏はテクノロジー分野に強みを持っており、HYBEのデジタルプラットフォーム戦略が加速する可能性が高いです。

パク・チウォン氏が築いた基盤の上に、「HYBE 2.0」がどのように発展していくのか、今後の展開が注目されます。

まとめ｜パク・チウォン氏の経営戦略がHYBEにもたらしたもの

パク・チウォン氏の経営戦略は、HYBEを韓国のエンターテインメント企業から世界的な音楽ブランドへと成長させました。

彼が推進したマルチレーベル戦略やグローバル展開、そしてテクノロジーを活用した新しい収益モデルの確立は、HYBEの成功を支える大きな要因となりました。

また、財務面でも大きな成果を上げ、売上の劇的な成長と安定した収益構造の確立に貢献しました。

しかし、その一方で、HYBEは現在いくつかの課題にも直面しています。

ADORとの経営権対立や、アメリカ市場における財務リスクなど、解決すべき問題は少なくありません。

また、パク・チウォン氏の退任後、HYBEがどのように経営方針を進化させるのかも注目されています。

2024年7月には新CEOイ・ジェサン氏が就任し、「HYBE 2.0」と呼ばれる新たな経営戦略が始動します。

マルチレーベル戦略のさらなる強化、テクノロジー事業の拡大、そしてグローバル市場での新たなM&A戦略が、HYBEの未来を決定づけることになるでしょう。

パク・チウォン氏が築いたHYBEの基盤は、今後も企業の成長を支える重要な要素となります。

彼の経営戦略がもたらした革新が、HYBEを次のステージへと押し上げるのか、今後の展開に注目です。